ドラフト注目の佐々木投手で話題になった、学生ピッチャーに球数制限が必要な理由

ロッテの1位指名を獲得した大船渡高校の佐々木投手。その佐々木投手を通してこの夏話題になった球数制限。 私は、いちトレーナーとして、選手生命に関わる怪我を防ぐために学生ピッチャーにはちゃんとした規制が必要だと思っています。その理由を怪我のメカニズムを含めて書いていきたいと思います。

この記事のヘッドライン
  • ピッチャーに多い怪我
  • 学生ピッチャーの怪我のリスクが上がる要因
  • 選手生命に関わる怪我のメカニズム
  • 学生ピッチャーに規制が必要な理由
  • ピッチャー⇄キャッチャー交代にも規制がある理由

現在のアメリカの研究結果では、野球全体での40-80%の怪我がピッチングに関わっているとされています。また約4割の学生ピッチャーピッチング中の痛みを経験していると言われており、5-10%のアメリカの高校球児が手術をしてます。

ピッチャーに多い怪我は?

野球のピッチング関連で多い怪我が

  • 肘の内側側副靭帯(UCL)損傷 or 完全断裂
  • 上方肩関節唇損傷 (SLAP損傷)
  • ハムストリングの肉離れ
  • 上腕二頭筋の腱炎
  • ローテーターカフ(肩のインナーマッスル)の肉離 or 完全断裂
  • 背筋の肉離れ
  • 腹斜筋(腹筋の1つ)の肉離れ

上肢の怪我が太文字で示されており、上肢の怪我が圧倒的に多い事が分かると思います。

そして、右肘靭帯(UCL)断裂、ローテーターカフの断裂、上方肩関節唇損傷(SLAP損傷が選手生命に関わる怪我として言われています。

あの元ソフトバンクフォークスの大エース斎藤和巳投手が上方肩関節唇損傷で苦しみ引退にしましたし、日本ハムファイターズの斎藤佑樹投手も同じ怪我で苦しんでいますね。

ピッチャーではないですが、元阪神の金本知憲選手がローテーターカフの一つの棘上筋断裂で送球に苦しんでいたのを覚えています。

そして、右肘靭帯(UCL)損傷はMLBで年々増えていて、右肘靭帯(UCL)の手術(トミー・ジョン)を受ける年齢が年々早くなっています。アメリカでは高校球児でもトミー・ジョン手術を受ける人がたくさんいます。

学生ピッチャーの怪我のリスクが上がる要因は?

研究結果によりますと、学生ピッチャーの怪我のリスクが上がる要因は、

  • ウォームアップ中の球数
  • 1ゲームでのイニング数
  • 1ゲームでの球数
  • 年間で100イニング以上の登板
  • 1年間で8か月以上の間、ピッチングを行う

リストを見ますとお分かりだと思いますが、学生の将来を見据えた選手生命を考えたら、この夏話題になった球数制限だけでなくイニング制限にオフシーズンでのノースローも重要になってきます!

アメリカでのピッチング制限の詳細はこちら!

では、なぜこれらの要素が学生ピッチャーの怪我に繋がる要因なのか?を、選手生命に関わる怪我の一つの上方肩関節唇損傷(SLAP損傷)のメカニズムを使ってお伝えしたいと思います。

ピッチングでのSLAP損傷のメカニズム

まず最初に、上腕骨と肩甲骨が繋がっている所が肩関節と呼ばれます。この肩関節を形成している上腕骨と肩甲骨の接地部分に、骨と骨の摩擦を防ぐ為のクッションのような役割をしているのがあり、それが肩関節唇と呼ばれています。膝にある半月板と同じようなものです!

この関節唇は円形なのですが、関節唇の上の部分(時計でいう10時から2時くらいの位置)の損傷を上方肩関節唇損傷(SLAP損傷)と言われております!

そして、ピッチングでこのSLAP損傷を引き起こす大きな要素の一つが「上腕二頭筋」になります! なぜかと言いますと、上腕二頭筋の1つの腱がこの、関節唇の上部についているからなんです!

ピッチングのモーションの中で上腕二頭筋が一番使われるのが、加速期減速期です。

 

加速期は、腕を後ろに引き切ったところからボールを離すまでのモーション(写真の左から1~2つ目の動作)で、この間の動きで、肘は曲がった状態から伸ばす動きをします。この時、肘が勢いよく伸び過ぎない様にコントロールするために上腕二頭筋が使われます。

減速期は、ボールを離してから手首を返しきるまでのモーション(写真の左から23つ目の動作で、この時上腕二頭筋は、上腕骨が肩関節から脱臼しない様に固定する役割があります。

しかし、この加速から減速期の間に大きな出力を作ってボールを投げる為、その出力に上腕二頭筋が耐えれなくなると、二頭筋の腱がくっ付いている関節唇ごと引っ張られ、剥がれてしまうということです。

では、何がこの状況を作り出すのか?!というと、ピッチングフォームに繋がります。

ピッチングのメカニズムの研究から、適切なピッチングフォームで投げれていないとき、上腕二頭筋への負荷が異常に大きくなることがわかっております。その為、

1. プロのピッチャーよりアマチュアのピッチャー(学生を含む)の方が上腕二頭筋への負荷が大きいのです!

更に、たとえどんなに適切なピッチングフォームで投げれる選手でもピッチングフォームが崩れることがあります。

それが、疲労です!

どんなに適切なフォームで投げれるプロ野球選手でも疲労が溜まるとピッチングフォームは崩れてしまいます。

本来、 ピッチングで作られる大きな力は、下半身で作り出される力が胴体を通して腕に伝わって作り出されています。 しかし、下半身が疲れてくると下半身でパワーを作り出さず、上半身だけで作り出そうとします。結果、大きな負荷が肩や肘にかかってしまい、選手生命に関わる怪我に繋がるという事です。。

今回、SLAP損傷を例に怪我のメカニズムを書かせていただきましたが、プロ・アマチュア関係なく 長期離脱が必要な怪我のほとんどはこのピッチングフォーム×疲労という仕組みになっています。

学生ピッチャーに規制が必要な理由

そして、なぜ学生ピッチャーには規制が必要かというと、 学生ピッチャーはプロと比べて

  • 適切なピッチングフォームで投げれる選手が少ない
  • 成長期で骨格が未完成な為、小さな負荷でも大怪我に繋がりやすい
  • 基礎筋力が弱いため、ピッチングフォームを崩しやすい

上記から、元々プロ野球選手よりも圧倒的に選手生命に関わる怪我のリスクが高い学生ピッチャーが、短期決戦で規制なく疲労を貯めた状態で投げ続けてしまったらどうなるか?という事です。

更に、ピッチャーの選手生命に関わる怪我は捻挫や肉離れ等の急性の怪我とは違い、酷使による事が殆どです。つまり、学生の間に明らかな大怪我や症状が出なくとも負荷は蓄積されていく為、将来的な怪我のリスクが確実に上がっていくという事になります。

日本人ピッチャーがメジャーリーグ(MLB)に挑戦する時に懸念される理由は、ここにありますね。

まとめますと、選手生命に関わる怪我は適切なピッチングフォームの有無に関係しており、そのピッチングフォームに一番影響を与えるのが疲労だという事です。その為、怪我に繋がる下記の要素

  • ウォームアップ中の球数
  • 1ゲームでのイニング数
  • 1ゲームでの球数
  • 年間で100イニング以上の登板
  • 1年間で8か月以上の間、ピッチングを行う

これらをアメリカでは学生ピッチャーに対して、年齢に合わせて規制をしているという事になります。

更に、 高校生まではピッチャーは降板後に違うポジションに着くことは少ないと思います。しかし、アメリカでは球数だけでなく、ピッチャーが交代でキャッチャーのポジションにつく事に対しても細かな決まりがあります!

ピッチャー⇄キャッチャー交代に規制がある理由

上記でお話したように、ピッチングで作られる大きな力は、下半身で作り出される力が胴体を通して腕に伝わって作り出されています。そして、下半身が疲れてくると下半身でパワーを作り出さず、上半身だけで作り出しがちになり結果、大きな負荷が肩や肘にかかってしまい、怪我を引き起こします。

その為、 ピッチング関連での怪我は肩自身の疲労以上に、下半身の疲労が大きな怪我の原因とされており、 ピッチャーは肩を休ませるより、下半身の疲労を取らないといけないという事です!

お気づきの方も多いかと思いますが、キャッチャーは守備中、基本的に座り、ピッチャーが投げる度に立ちあがりピッチャーに返球します。その為、ピッチャーが投げる度にスクワットをしていて、下半身を休ませるどころかより疲弊させることになります。その為、一定以上の球数を投げたピッチャーはキャッチャーを守ることを禁止されております。もちろん逆もしかりで、一定以上のイニングを守ったキャッチャーはその試合、ピッチャーに着くことを禁止されているという事です。

日本ハムファイターズの斎藤佑樹投手の話に戻りますが、プロ3年目の時にSLAP損傷の怪我されたという事ですが、それより前の大学時代に左股関節(踏み込み足)を怪我されているみたいなんですね。股関節の怪我の影響で下半身が上手く使えず、上半身にストレスがかかってしまって、選手生命を失う程の肩の怪我に繋がってしまった可能性がありますね。

まとめ

プロ・アマチュア関係なく 長期離脱が必要な怪我のほとんどはこのピッチングフォーム×疲労という仕組みであり、特に下半身の疲労が上半身の疲労よりも、上半身の怪我に繋がってしまう。プロと比べて学生ピッチャーは

  • 適切なピッチングフォームで投げれる選手が少ない
  • 成長期で骨格が未完成な為、小さな負荷でも大怪我に繋がりやすい
  • 基礎筋力が弱い為、ピッチングフォームを崩しやすい

その為、学生ピッチャーはプロのピッチャーに比べて怪我のリスクがガクンと上がってしまう。 そして、選手生命に関わる怪我は酷使から来ていることがほとんどである。

その為、未来ある学生ピッチャーを怪我から守るために、球数・イニング数・休息日を設ける必要性があるのではないか?と思います!

きちんとした規制で、未来ある選手たちにとって大切な”成長する環境”になればいいなと思います!

アメリカでのピッチャーの規制の詳細はこちら!

アメリカの準国家資格(メディカルトレーナー)のアスレチックトレーナー(NATA-ATC)として自分の知識・経験と研究結果を下に学生アスリートの保護者の方・顧問/監督・ファンの方に特に野球に関する怪我、トレーニング、身体の仕組みをお伝えしたいと思っております!興味のある内容・質問などぜひコメントにお願いします!

にほんブログ村 野球ブログへPVアクセスランキング にほんブログ村

参照

Fleisig, G. S., Andrews, J. R., Dillman, C. J., & Escamilla, R. F. (1995). Kinetics of baseball pitching with implications about injury mechanisms. The American Journal of Sports Medicine, (2), 233.

Little League. Regular Seasons PitchingRules. Retrieved from https://www.littleleague.org/playing-rules/pitch-count/

Lizzie Hibberd. “UCL Reconstructions for Baseball Pitchers at Andrews Sports Medicine.” NATA Clinical Symposia & AT Expo, 26-29 June 2018, New Orleans, LA.

1件のコメント

  1. […] ドラフト注目の佐々木投手で話題になった球数制限が必要な理由の記事で書かせていただいたように、上肢の疲労よりも下肢の疲労が肩や肘の怪我に繋がるため、軟らかいマウンド用のピッチングフォームの日本人は、硬いマウンドでのピッチングで怪我をしやすいという事でした。 […]

    いいね

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google フォト

Google アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中