速球派投手が硬いマウンドで苦労するメカニズム

MLBに挑戦する選手が増えた事、国際大会で勝ち抜くために国際大会に合わせたルールにするという目的で、今シーズンから、東京ドーム・ナゴヤドーム・甲子園球場・マツダスタジアムの4球団が新たに「メジャー仕様」の硬くて傾斜のあるマウンドに作り替えられました!

近年、メジャーリーグ(MLB)に挑戦する日本人ピッチャーが増えましたが、軟らかくて傾斜の小さいマウンドで慣れ親しんだ日本人ピッチャーは、MLBの硬くて傾斜のあるマウンドに苦労し、ピッチングフォームを変えたりなどで順応するのに時間がかかると言われています。

また、MLBに比べて軟らかくて傾斜が小さいNPBのマウンドでも、球場によってマウンドの硬さや傾斜は違うと言われている為、ピッチャーは違うタイプのマウンドに柔軟に対応できるピッチンフォームが要求されます。

特に、速球派のピッチャーは硬くて傾斜のあるマウンドではシュート回転のボールが増えてしまい、苦戦しているイメージがあります。

今回、2日に分けて、マウンドの傾斜と硬さがどのように速球派投手のピッチングに左右するのか書いていきたいと思います!

球速に関わる要素

マウンドの硬さがどのように影響するのかを説明する前に、球速を左右する大まかな要素を伝えます!

1. 軸足から踏み込み足への前方への体重移動

2. 軸足から踏み込み足への体重移動中の胴体の回転速度

3. 軸足・踏み込み足の床反力(地面から作られる力)

4. ボールをリリースする時の、手首の速度

2日に分けて細かく説明していきますが、前提としては、

マウンドの傾斜や硬さがこれらの要素に影響をきたす為に球速が出にくかったり、シュート回転になり、それを庇おうとすることによって肩や肘への負荷が増え、怪我に繋がるという事です。

マウンドの硬さとピッチングフォーム

日本人特有のピッチング:粘り投法は、軸足の下肢のすべての関節をしっかり曲げ、重心を落とし、長い時間しっかりと体重を軸足に乗せています。特に速球派の方はこれが顕著ではないかと思います。

今年、勝利数1位、防御率2位で3度目のノーヒットノーランを成し遂げたアストロズのバーランダー投手と、楽天時代の田中将大投手ピッチングを比較すると歴然だと思います。

そして、この日本人の粘り投法を可能にしているのが、まぎれもなく軟らかい土ではないかと思います。

物理の話になってしまいますが、自分の体重と重力が作り出す、地面に向けた力と反対の、地面から作り出される力(抗力)がないと私たちは歩いたり走ったりできません。

歩いている動きの中での抗力を床反力といい、この床反力が後ろ脚を前に押し出す役割をしてくれることにより、前に進むことができます。

軟らかい地面は硬い地面に比べて、自分の体重と重力で地面を押し出す力を吸収するため、軟らかい地面では床反力が小さくなります。

海辺のビーチで歩いている時、コンクリートの上を歩くより前に進みにくい!と感じたことあると思いますが、それがこの原理になります!コンクリートなどの硬い地面に比べて床反力が小さくなる為、前に進みづらくなるということです。

ここで、球速を出すのに必要な要素をおさらいすると

  • 軸足から踏み込み足への前方への体重移動
  • 軸足から踏み込み足への体重移動中の胴体の回転速度
  • 軸足・踏み込み足の床反力(地面から作られる力)
  • ボールをリリースする時の、手首の速度

硬いマウンドに比べて床半力の小さいマウンドで投げてきた日本人ピッチャーの速球派投手は、球速を出すために柔らかい土のこの進みづらさを利用して、軸足にできるだけ体重を残して軸足の下肢で粘ルールことによって自ら床半力を作り出して、低い体制のまましっかり曲げた 踏み込み足に体重を乗せる選手が多いです。

しかし、この軟らかい地面用のフォームで投げる選手がMLBのような硬いマウンドで投げると、硬い地面が柔らかい地面より大きい床半力を作る為、地面が後ろ脚を前に押し出す力が大きくなってしまい、軸足で粘ることが難しくなります。

結果、軸足の下肢でタメを作れずに早い段階で身体が前に倒れてしまうため、身体が開いてしまい、腕投げになり、リリースポイントがずれシュート回転してしまうという事です。

しかし、地面が作り出す床半力はかなり大きくなるので、身体が開いてシュート回転していても、球速は変わらないという事もあり得ます。

また、硬いマウンドでは軸足でのタメが十分でないと、ピッチングフォームが崩れ、上肢の力に頼った投げ方になってしまうため、日本の速球派ピッチャーはMLBに行くと速い段階で肩や肘の故障に悩まされる傾向があります。

逆に本格派の選手は、柔らかい土でも元々床半力を自ら作り出すフォームでなく、踏み込み足を支点にしたような投げ方をする選手が多いと思います。この投げ方は、日本人の速球派投手よりはMLBの投手の投げ方に近いですし、硬いマウンドの方が踏み込み脚のバランス力は取りやすいので、硬いマウンドを好む投手の方が多いのではないでしょうか?

上記の、球速を出すための要素を考慮しながら、本格派で硬いマウンドを好むと言われている金子弌大投手と、ストレートとわかっていても打てない火の球ストレートを投げる速球派の藤川球児選手のフォーム比べてみましょう。

速球派の藤川投手は加速期の前まで下半身をぎりぎりまで落とし膝を内にいれて粘っているのに対して、金子投手の下半身は高めで膝も内に入っていません。

ボールをリリースする時とリリース後が歴然で、速球派の藤川投手は軸足の膝が今にも地面に着きそうな程落としていて踏み込み足もしっかり曲がって上半身の体重を乗せています。一方、本格派金子弌大は、踏み込み足が支点になるくらいの膝と上半身の屈曲です。

胴体を捻り切り、踏み込み足に体重を乗せきっている藤川投手と、踏み込み足はあくまでピッチングの支点という感覚のような金子投手。踏み込み足の膝の角度と上半身の体重の乗せ方の違いが歴然ですね。

余談ですが、日本ハム時代の大谷選手のピッチングで、ボールをリリースする瞬間、踏み込み足を手前に引くようにホップしていたのですが、これも球速を出すための要素の一つになります。

膝の曲がった踏み込み足に体重を乗せた後の膝の伸展速度が球速に関わります。ジャンプするときにエネルギーを貯める為にいったん少し膝を曲げ身体を落とした後に、勢いよく膝を伸ばして上に飛ぶのと一緒のメカニズムを、大谷選手は球速を出すために使っていたのだと思います。

そして、本格派でいえば、他の球場より硬めのマウンドのナゴヤドームを本拠地にした中日で50歳まで活躍された山本昌投手も金子投手に近いピッチングフォームでした。

以上から、松坂投手等の速球を売りにしていた投手よりも、上原浩治手・黒田博樹投手など、コントロールと球種を売りにしていた投手の方が硬いマウンドのMLBでは大きな怪我が少なく、長年活躍しているのではないかと個人的に思います。

しかし本来、身長や体重などの身体的な差がない場合、軸足の床反力(地面からの力)が大きい方が球速がでるという研究結果が出ております(上記の3番)。それは、床反力が前に身体を前に押し出してくれる分、体重移動がスムーズにいくからです。

その為、この硬いマウンドでは自然と球速が上がりやすくなります。日本人投手がMLBでの登板では球速が上がるというのも、これが大きな要因ではないかと思います! ダルビッシュ有投手も、今年最速の159km/hを出されましたね!

まとめ

今回は、マウンドの硬さがどのようにピッチングフォーム関わるかを書かせていただきました。球種とコントロール勝負の本格派の投手よりも、速球の速さを売りにしている投手の方がマウンドの硬さに悩まされる要因が多いというのが私の感想です。

逆にMLBの挑戦を視野に入れている日本人は、速球を売りにしていても、田中将大選手のように速球も使いながら、MLB挑戦までに球種とコントロール磨きが重要になってくるのではないかと思います。

田中将大投手の楽天時代と先週の試合のピッチングを比べてみましたが、やはりマウンドの硬さと傾斜に合わせて、軸足の体重の乗せ方・下半身の沈み具合は少し和らげています。

反床力の強い硬いマウンドで、軟らかいマウンドと同じ軸足の体重の乗せ方・下半身の沈み具合を出そうとすると、下肢の強さが余計にいることになります。その為、下肢への疲労の蓄積は早くなります

ドラフト注目の佐々木投手で話題になった球数制限が必要な理由の記事で書かせていただいたように、上肢の疲労よりも下肢の疲労が肩や肘の怪我に繋がるため、軟らかいマウンド用を利用した速球派日本人投手は、硬いマウンドでのピッチングで怪我をしやすいという事でした。

次回、この続きで、マウンドの傾斜がどのようにピッチングに影響するのか書いていきたいと思います。

アメリカの準国家資格(メディカルトレーナー)のアスレチックトレーナー(NATA-ATC)として自分の知識・経験と研究結果を下に学生アスリートの保護者の方・顧問/監督・ファンの方に特に野球に関する怪我、トレーニング、身体の仕組みをお伝えしたいと思っております!興味のある内容・質問などぜひコメントにお願いします!

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